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zoom RSS 「大丈夫、大丈夫、心配ない、心配ない」−ある中国語教師の想い出

<<   作成日時 : 2013/01/01 22:17   >>

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かなり前の話になるが、
私は都内の小さなサークルで
中国語を学んでいた

これは中国と交易のある関係会社同士が
希望する社員を集めて
中国語を学ばせるというもので
生徒数が10人ほどの
ごく小規模なものだった。

当時は中国への出資がいまだ
積極的に語られる時期ではなく
学びにくる各社の方々にも
それほどの熱意のようなものは
感じられなかった。

講座の先生は、初老の中国人女性で
中国の大学で日本語を習得した後
来日して、講座の主催者の関連会社
で働いている人だった

中肉中背、おだやかで
笑みを絶やさない方で
生徒が問題に答えららなかったり
間違えた時でも口癖のように
「大丈夫、大丈夫、心配ない、心配ない」
と励ます気さくな方だった

今から思えば、その先生は
実務のほうも、けっこう忙しかったようで
中国からの来客の応対のため
しばしば講座を休み
また講座の内容も、気楽なサロン風だったこともあり
しだいに生徒数が減ってゆき
とうとう4人ほどになってしまった

すると今度は先生との距離が短くなって
集まった連中と終了後に
食事にいったりするようになり
すっかり先生と親しくなってしまった

あるとき、私を含めて数名の生徒が
先生の自宅に招待されたことがあった

訪ねてみると
10人ほどの中国人の男女がいた
みな、日本の会社に勤務したり、あるいは
研修で来日している方々だった

出身地もみな別々だったが
男女の区別なく手を粉にして
出身地特産の餃子を作っていた

中国では男性も女性に混じって
積極的に厨房に入り、料理に腕を振るう
しかも、素人でも
日本の中華料理専門店並みの腕前だ!


そのうち、酒屋の車が止まって
先生が頼んでいたビールのケースを
店員の方が運んできた。

たまたまその方が中国人の女性で
家の中にケースを運んで
中に大勢の中国人がいるのを見ると
座敷に上がりこんできて
彼らと談笑に加わり、話に花が咲いた

そのうち電話が鳴り、
私が電話口に出ると
それは酒屋の主人で
「内の店員が配達に行ったのだが
帰ってこない。何かあったのか?」
という困惑した話。

そこで店員の方に出てもらうと

「今、郷里の友達、いっぱいいるので
私、今日はこれで休みます」


そばで聞いている私の耳に
相手の酒屋の主人が激怒しているのが聞えた
電話を切るとその店員は、怪訝そうに言った

「故郷の人達と会っているのに
どうして主人があんなに
怒るのかわからない」


このことを先生に話すと、彼女は笑って
「大丈夫、大丈夫、心配ない、心配ない」
とまったく屈託がない

その後、何度か先生のお宅を
訪ねる機会があった
某日、ある要件で自宅にお邪魔したとき
ご主人が出てきて
先生は急用ができて
出かけたということだった

そしてとにかく上がりなさいと言われて
座敷に通されて
談笑していたところ
電話が鳴ってご主人が出た。

なんか口論のような感じになっている

電話を終えてご主人が言った話も
強烈な印象がある

「今日、先生の会社に中国の方が来ていて、
先生が通訳することになっていたのだが
まだ来ていないのでどうなったのか?
という電話だった。
急用が出来て出かけていると言ったら
相手がとても怒ってしまった。

そこで、私も中国人で通訳できるから
私が代わりに行きましょうかと言ったら
相手はますます怒ってしまった。

どうして日本の人はこんなことで
すぐ怒るんだろう?]


それからしばらくして講座が廃止になった。
参加していた方々がおしなべて
中国へ行ってしまうという状況になったのだ。
中国への投資ラッシュが始まり
先生も、まずます多忙になり
中国と日本を頻繁に行き来するようになった

先生の会社の方から、ときどき電話が来て、
先生が掴まらない、
行く先を知っているかと聞かれる
ということがしばしば起きるようになった

日中両国に顔の広い先生は、
その人脈も相当に豊富で
大勢の方が、先生を訪ねるという
状況が起きて先生もコントロール
できなくなったようだった

その後、たまたま日本に戻ったときに
電話がかかってきて会ったことがある。

そのとき、先生に、会社の方々が
先生とコンタクトが取りにくく困っていると話したら
例によって
「大丈夫、大丈夫、心配ない、心配ない」
という返事が返ってきた。

私は先生の周辺の人人の
慌てぶりに反して
中国人である先生の
異様なまでの落ち着きとオプテイミズムに
激動の4千年を生き抜いた
中国の庶民、あるいは商人の
したたかさのような物を痛感した

その後、先生はどこかの会社からスカウトされて
転職してしまい、中国に行ったきりになってしまった。

ところで酒屋の店員の方の件や
通訳の業務をすっぽかすなど
小生も、その後、似たような事に出くわして

中国の人にとって
前の約束よりも直近の約束を大切にする
という特質があるということに気づいたが

その後、彼らには
たとえ今日、会社の命運を賭けるような
取り引きがあるからといって
肉親や知人に何かあれば
躊躇することなく肉親の元にかけつける

という国民性があるという事を知った

この特質は中国に限らず、韓国の方々にも顕著であり
従って東アジアに特有なものであり

そういう彼らから見れば
私用を犠牲にして公務を優先する
我々、日本人が奇異に写ると同時に
我々にとっても、彼らに対する
大きな誤解のもとになっているのかもしれない

先生が中国に渡って(というか「戻って」しまって)
長い歳月が経った。
日中との関係はひところに比して最悪になった
日系企業への反発、日系商店の破壊など
これまでかの地で蓄積された物が一挙に破壊される

こういう状況を先生は
どのように考えてみているのだろうか?
あの先生のことだから、
きっと笑いながらこういうに違いない

「中国、日本?
大丈夫、大丈夫、
心配ない、心配ない」





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